前回記したように、SPU G /A はどちらであれシェルを含めての評価であり、其々にファンがいる。A シェル、 G シェル いずれも、見れば見るほどに何とも云えずに良い雰囲気を持っていて、良い音がしそうである。
そのシェルを取り外す事は、伝統的ファンからすると無粋に見えるかも知れない。しかしながら、針圧1~2gである。現代のカートリッジの中にあってSPUがどの様な位置にあるのか適正な評価をする為にも、カートリッジのみで音を評価をする事はその本来の可能性を探る上で有用なのではと考える。振動系の条件を近いものにする事ができるし、そこに齟齬はない。
最も、ネジで簡単にモトに戻せるのであればそれほど堅苦しく考える必要も無いかもしれないが。付言すれば、今まで盲目的に初期モデルを重針圧として使用して(正しく使用しないままに)高い評価を与えて来たのではなかったか?
結果を先に書けば、ヌード状態のSPU は”素晴らしく鮮度の高い音”がする。実際オルトフォンから発売されたヌードタイプはSPU ROYAL だけであり、シェル一体での音を本来の音としているのは、明白であるし、他のシリーズもあり販売上の理由があるのかも知れないが、単体で発売しなかったのは不思議な気がする。
ヌード状態のSPU を取り付けて試聴するプレーヤーはウェルテンパード リファレンスである。
このプレーヤーは、カートリッジの適応範囲が広く、それぞれの持ち味を引き出してくれる。そのため、新しいカートリッジは、最初に取り付けて音を確認する事にしている。
誤解されるところもあるので、少し詳しく紹介しておきたい。
Well-Temperd Reference 【ウェルテンパード リファレンス】
独特の構造を持つターンテーブルは、寺垣プレーヤーよりスマートにガタ付きゼロを達成したプレーヤーだと思う。特にアームは秀逸で、調整範囲も広くカートリッジ本来のパフォーマンスを引き出すのに長けているが、その独創ゆえに毀誉褒貶 正しく評価されない事があり残念に思う。
このアームは、軸受け・ビボットが存在せずアームを受ける支持部がオイルバスの中で浮いた状態に為る様に、ナイロン糸で釣っている。ビポット位置はシリコンオイルの粘性で決まってくるが、粘度は極めて高く、瞬間的な入力に対しては微動だにしない。実際、20Hz以上の入力に対しては不動のガタゼロの動作となる。ところが、20Hz以下の周波数では柔軟な特性を示し、高いハウリング能力を示す。シリコンオイルの独特な特性をビポットレスとする事により引き出した絶妙の設計である。
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http://www.welltemperedlab.com/valin.html
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上部のノブで糸の状態を調整する事により、演奏中にカートリッジのジオメトリーを無段階に調整できる機能を持っている。コンプライアンスに応じてダンピング量も広範囲に調整できるが、この点だけは調整が煩雑になるため、殆どのユーザーはダンピング量を適切に設定していない事が多い。
それが故に、適切に調整されていない状態で判断される可能性が高く、その辺りが評価を二分する要因となっているようだ。
調整が出来た時は個々のカートリッジの個性を十分に再現し、生音に近い豊かなハーモニーとアタックの鋭さを表出してくれるアームでありターンテーブルである。
シリコンオイルを使っているからアタックが出ない等との評価は、シリコンオイルに浮いている構造からイメージされるのかも知れないが、的を射ていないと杞憂と思う。シリコンオイルがその様な音質的傾向を持つとしたら全てのワンポイントアームも同様の評価と為ってしまうだろう。
ただ、ハウリングは通常レベルでは充分なマージンがあるが、ハードサスペンションとボードの影響かセッティングには、思いの外注意が必要かも知れない。
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