2013年4月7日日曜日

スピーカーの塗装 バイオリン編

先にエンクロージャーのことを書こうと思っていたのだけれども、このところ塗装作業をやっていた事と調べたこともあるので、今回は、塗装の事を取り上げたい。

塗装といえば、大きく話題になるのが、バイオリンでありギターである。
特に”ストラディバリウスの音の秘密はニスにある”と云うエピソードは巷間に語られる。
ギターも音の秘密がニスにあると云われる楽器で、これらの楽器を調べる事も思わぬヒントが有るかも知れない。

楽器には、民族の歴史・血、美意識を凝縮した美しさがある。その中にあっても、バイオリンは、優美で曲線を持ちながら、隙のない構成・有機的なプロポーションは、人類が生み出した道具として最も美しい物の一つではないかと見惚れるばかりだ。

今回は、バイオリンやギターの塗装を調べてその上で、スピーカーの塗装を考えてみたい。

バイオリンの塗装 概要
バイオリンニスの基本はセラック や バルサム(樹木が分泌する樹脂 松脂など)である。
アルコールニス オイルニスに大きく大別されるが、溶媒の種類による。
バイオリン 独特の色合いは、染料で着色する。

まずバイオリンから最高峰といわれるストラディバリウスの塗装から見てみたい。

<画像は Library of Congress より借用

Violin by Antonio Stradivari, Cremona, 1704, "Betts"


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Stradivari Vanish   <バイオリン工房 OUCHI様の こちらから引用・抜粋>


この本では、ストラディバリウスのニスについて科学的に分析、解析されている。
著者Stehan-peter Greinerは14歳からバイオリン製作を始めた。
ボンでバイオリン製作家として修業し、ケルン大学で音楽・芸術を学び、1995年バイオリン製作マイスターを取得した。弦楽器の音を研究する物理学者Heinrich Dunnwald博士と巡り会う。
またドイツ・ボルンハイムのマイクロケミカル研究所のElisabeth Jagers
博士やErhard Jagers博士との共同研究も進めた。

ウイーン、オックスホード、ロンドン、パリやフローレンスの博物館の協力とロンドンのベアーや
ウイーンのマックホールドなどの工房からも貴重な情報を受けた。

Contents
この研究には木に含浸している物質を見出すためにX線分光器を使用し、ニス層には紫外線を当て色の変化で物質を特定している。
この本では、ニスの分析を次のように記述している。

ストラディバリウスのニスは4層から成っている。
下地層、ステイン層、透明ニス層、色ニス層で構成されてる。

・下地にはニスを塗る前に後の層が木に浸透を防ぐためにニカワを
塗布した可能性がある。

・下地の上には水溶性のステインが塗布されている。
この中には塩分が含まれ、当時の防虫剤としての役目を果たした可能性がある。
ステインは木の細孔に沈み込んで見える。

・透明ニスはオイルニスと思われ、リンシドーと松脂で構成されている可能性がある。
松脂は生か炙ってあるのかは現在は不明である。

・色ニスは透明ニスに色素を入れたもので、下地の上のステインと同様の色素の可能性がある。

・研究チームはcarmine顔料同様に茜(mader)顔料を用いてストラデバリのニスに類似するニスを完成させた。

ピグメントは金属塩を持つ溶解染料の沈殿によって製造することができる。
アルミ、錫を含む金属塩を用いるとストラディバリウスのニスのようにサーモンピンクの色になった。
イタリアのcarmineで観察でき、時にcrimson顔料と呼ばれた。
カルミン酸 <詳細はこちらは>コチニールの昆虫のメスを乾燥させ作り出す。

もう一点 <AFP NEWS BBから引用
【12月5日 AFP】イタリアの弦楽器製作者アントニオ・ストラディバリ(Antonio Stradivari、1644~1737)が作った弦楽器の名品ストラディバリウス(Stradivarius)。

その特別な音色の秘密として木材や接着剤、防虫剤としての鉱液、バイオリンの形状など、専門家の間でさまざまな議論がかわされてきたが、有力視されてきたのは表面の塗装に使われた「ニス」だった。

しかしフランスとドイツの専門家チームが、4年にわたる研究の結果、ニスはごく普通のものだったと発表した。

研究チームは、ストラディバリが約30年の間に作ったバイオリン4丁とビオラ1丁のニスを赤外線で分析した。その結果、ニスの材料として使われていたのは、18世紀の工芸家や芸術家の間で一般的だった油と松やにの2種類だけだったことが分かった。

研究に参加したパリ(Paris)の音楽博物館(Museum of Music)のJean-Philippe Echard氏(化学工学)は「ニスが音色に影響を与えていると言えるだけの知見は得られなかった」と述べた

琥珀(こはく)やハチが作り出す蜂ろうなどがニスに含まれているとの議論もあったが、それらの材料は一切検出できなかったという。さらに、松やにも豊かな色合いを出すために使われた可能性が高く、この他に見つかった赤い顔料も、見た目を変えるために使われたようだという。

研究チームは「ストラディバリは特別な秘密の材料を使わなかったのかもしれない。弦楽器製作、特に木材の仕上げに秀でた工芸家だったのだろう」とし、ニスのレシピは非常にシンプルなものだったと結論づけている。(c)AFP/Benoit Fauchet

朝日新聞 digital> ではこの様に記している。
その結果、ニスは2層に分けて非常に薄く塗られていることが判明。油絵に使われるのと同じ油が最初に塗られ、本体の木に軽くしみ込んでいた。その上に塗られたのは油と松ヤニとの混合物。赤みを帯びた光沢をつくり出すために顔料が混ぜられていた。

この技術は画家の手法から発想を得たとみられる。いずれも、当時としては平凡なニスだった。琥珀(こはく)や特殊な樹液が溶かし込まれているのではないかなどと取りざたされてきたが、検出されなかった。
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更に詳細な分析結果がこちらに紹介されている <Leroy Douglas Violins より Classic Violin Varnish>興味のある方は参照ください。

現在の科学をもってしても解明されていないストラディバリウスの音の秘密は、「ニス」とされてきた。名器と言われているヴァイオリンのニスは、「調合された秘伝のニス」であるとか、「人の血液が混ぜてある」とかいった言い伝えもあるとかないとか・・・。プロポリスや琥珀(こはく)やハチが作り出す蜂ろうなどが含まれている、などの説もありました。
当然、件のニスは当然多くの研究がなされている。

秘密とされたストラディバリウスのニスは、最近の研究では現代でもバイオリン製作に使用されるニスと同様と考えれれ既に秘密は解明されたと主張する人もいるが、未だ謎を残しているという人もいる。

例え、秘密のニスレシピが解明されたとして、果たして分量通りの調合をしたとして同じものが出来るのだろうか? 調合する場所、気温、湿度などの条件により微妙に変化します。ニスと音の関係については様々な伝説と説があり、未だに解明が出来ない部分といわれています。現在の技術では目立たないように修復することができますが、その音色まで修復されているのかは疑問です。

今回のフランスとドイツの専門家チームの研究や上記の文献の様に、分析の結果でそれを窺わせる内容は発見されなかった。

誤解が無いように断っておきたい事は、ヴァイオリンのニスもふつうの工芸品と同じく年月を経れば色は変わり、剥げてきますので古い楽器のニスは後に修復されているケースがほとんどです。ストラディヴァリを初めとして、オールドヴァイオリンと言われる300年有余を経たオリジナル楽器のオリジナルニスが塗装が残っている事は稀で、多かれ少なかれ補修・再塗装を施されているという事実である。全面的な補修を受けている事もあるようだ。

では、一般的なバイオリンの塗装の特徴を見てみよう。

記述には以下のサイトを参考にさせて頂いた。             
<ザ・オーケストラ様><バイオリンパレット様><バイオリン工房 OUCHI様>
<バイオリン製作家 木村拓也様><バイオリン製作家 菊田様>

ヴァイオリンのニス 
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ニスの種類
バイオリンの表面に塗るニスの種類には樹脂をアルコールで溶かす「アルコールニス」とテレピン油で溶かす「オイルニス」の2種類があります。どちらも天然の樹脂が原料ですが、溶剤で特性が大きく変わります。

アルコールニス: 溶剤にアルコールを使用し、速乾性で色、ツヤを出しやすい。欠点としては色ムラが出るので、タッチアップと研ぎを繰り返して色を合わせる必要がありアルコールニスは塗る作業が困難があります。

オイルニス: 
溶剤にテレピン油を用い、乾きにくいなどの欠点があります。。それゆえ色ムラがなく、平滑性が高い。色がなかなかつきませんが、木目はよく出ます。実際は、紫外線硬化性であるため紫外線ランプを使用すればこの問題を回避できる。溶剤を混ぜると変質してしまうため、一回ごとに調合する必要があり、歩留まりがよくありません。

両者の違いは、樹脂をアルコールで溶かすか、それともテレピン油で溶かすかの違いで、どちらが優れているというものではありませんが、硬度を調整するために様々な樹脂を溶解するのですが、可溶性によりアルコールニスは塗る作業が困難、オイルニスは乾きにくいなどの、製造過程での特徴はあります。天然樹脂を調合して目的の硬度を出す訳ですが、これらはほとんど油絵の溶剤・メディウムと同等の物です。

それよりも、色合いも、赤っぽいもの、茶色っぽいもの、オレンジ色っぽいもの、黄色いものなど様々ですが、ニスに艶があり、透明色があるようなものが好まれます。

ヴァイオリンニスの特徴
ヴァイオリンのニスは、アルコールニスであれオイルニスであれ家具などに塗られるニスとは性質がまったく異なり、音響効果に優れた柔らかなニスが塗られています。

良質なヴァイオリンは、ニスを1層塗ったら1週間以上乾かし、それを何十層も重ねて塗りこんで仕上げていきます。そのため仕上がりまでに数ヶ月かかりますので、ヴァイオリンが高価になるのがうなずけます。良質なバイオリンでは、ニスを手作業にて丁寧に何度も何度も、最低でも1ヶ月以上かけ塗りこんで仕上げます。
ニスを1層塗ったら1週間以上乾かし、それを15層ほど重ねて塗るといった気の遠くなるような作業も聞いたことがあります。やはりこれも価格に影響する大きな理由の一つです。

私は下地にアルコール、色ニスにオイルニスを使用しています。下地で目止めとペーパー研ぎを数回してから、色ニスを30回程度塗ります。乾くのに3日間かかるので、ニスだけで3ヶ月もかかります。

廉価ヴァイオリンはコストのかかるニス塗り仕上げではなく、ラッカーやポリウレタンなどポリ系塗料のスプレー仕上げになっています。それらはニス塗りと比べ、音響効果も劣り、塗装がペリペリと剥げてくることもありますのでご了承ください。汎用に使用されているウレタンニスは、皮膜が硬いので音も少し硬いですが、きれいな高音が出ます。ただし経年劣化は未知数です。

ニスの役割 効果
保護
汗などの水分や、汚れなどが木材にしみ込まないよう保護しています。
また薄いニス層ながら、木材の強度を増しています。外部からのちょっとした衝撃からも木材を保護しています。ニス自体の性質も重要で、柔らかで軽く、つまり木の膨張圧縮変化に従って楽器をきちんと包み込まなければなりません。

音響効果
ニスを塗らないバイオリンは非常に高い周波数帯の音を出しやすく、ある意味で耳障りな音になってしまいます。しかしニスにより木材が硬化し、この耳障りな音を取り除く効果があり、低音から高音まで美しく響くようになります。音の振動を増幅させるという重要な役割があります。


ニスを塗ることで、ヴァイオリンの音は低音から高音まで美しく響くようになります。
ニスを塗らないヴァイオリンは非常に高い周波数帯の音を出しやすく、耳障りな音になってしまいますが、ニスを塗ることにより木材が硬化し、この耳障りな音を取り除く効果があります。
ざらつきを抑え、音にまとまりがでてくるのです。ニス塗り前後の周波数特性を比べると高域成分が増加していることが分かります。下地材が染み込むことによる木質の硬化と表面の研ぎによる効果ではないかと考えられます。

美観
楽器の美しさをより引き立たせること。未塗装のホワイトバイオリンは木目もはっきり顕れないが、ニスを塗る事により木目が浮き出て、バイオリンの伝統的な様式美を成している。
<菊田バイオリン様から借用>



ニス塗りの実際
<バイオリンパレット様より>
私は下地にアルコール、色ニスにオイルニスを使用しています。下地で目止めとペーパー研ぎを数回してから、色ニスを30回程度塗ります。乾くのに3日間かかるので、ニスだけで3ヶ月もかかりります。

<久我バイオリン工房さんのブログから>
ヴァイオリンニスは、
2012年現在、基本的には、従来通り松脂を主体にしたものを使用しています。下地ニスは、ヴェネチアンテレピンの松脂を作り、赤褐色で透明な樹脂に、それにクルミオイル、リンシードオイルなど4種類をブレンドしたものを少量まぜ、硬さを調整しています。その硬さは、実際のストラディヴァリなどをタップした時の硬さを参考にしています。

色ニスは、天然のコチニールから色素を取り出し、先に書いたニスの別レシピ・オイルニスに混ぜまものを、透明ニスと交互に刷毛や、指で薄く塗ります。

カバーニスは、基本の透明、褐色ニスの少し硬めのものを塗っています。

これらの天然の樹脂、オイルの性質からニスは、半年から1年・・・・2年と経年するごとに、色が、黄変、褐色化し、より赤褐色色に落ち着きます。出来立てより、毎年色が美しく変化していきます。皹も入ります。

現代のアルコールニスやオイルニスは、楽器の保存性も良く、化学合成された色素のニスは、丈夫で、皹も入らず、数十年しても色も褪せず保存性が良く、道具として扱い、販売には好都合です。

しかし、楽器については、あまり丈夫でないニスの方が音に良いという・・・・残念ながら反対のことが存在します。(・・・と私は思います、そうでないという意見も有りますが、しかし、クレモナの名器は、総て?、大方?昔のニスを昔の塗り方で塗られたという事実があるようです。)

硬すぎず、柔らか過ぎず、ゴム的でなく、楽器を固めず、成分が音響に良い・・・を叶えるには、昔のレシピに近いニスに回帰せざるを得ません。

ニスは丈夫より、取れたら塗る・・・か、出来れば、取れても綺麗なとが理想です。なぜならヴァイオリンは、家具ではなく、楽器だからです。

バイオリン製作家 木村拓也氏 ヴァイオリン製作 あれ・これ ニスの話

バイオリン製作家 菊田氏 バイオリンのブログ コメント欄には、ニスに関わる様々な事柄を知る事が出来て興味深い。
是非、一読を。 この中でバイオリンの内側の事に触れているが、この事は後述するスピーカーにとって大きなヒントであった。




メインテナンス ニスの不具合
バイオリンのニスは、家具などに塗られるニスとは性質がまったく異なり、柔らかいニスが塗られているためキズやダメージを受け易いです。

さて、前述しましたように、特に高額商品に塗られる柔らかい良質なニスの性質上、ボディ表面にケースの跡が付いてしまうことがあり、特に湿度が高い梅雨の時期や、気温が高い夏の時期が心配されます。

ニスが安定するまで(数年を要することもあります)は温湿度の急激な変化に気をつけること、また直射日光や水分はもちろん、タバコのヤニやホコリの付着などにも十分に気を遣いましょう。

買ったばかりでも、たった数日でニスに何らかの跡が付くことも珍しくありません。裏板などにケースの跡が点々と付いてしまうことがよくあります。
また、肩当を装着する部分はもちろん、手でよく触れる部分などが剥げやすいです。
その他、ニスの配合によっては、楽器を高温下に置いていた場合、クリーナーとの相性が悪い場合などに、ニスが剥がれたりヒビが入ったりすることがあります。
高級楽器に塗られる柔らかい良質なニスの性質上、これは仕方がない問題でもあり、あまり神経質にならない方がよろしいかと思います。

これらは上質なニスの宿命であり、むしろ、風格や貫禄が出たとお考えいただくのがよいでしょう。
ニスにヒビが発生することで、ボディに対しての余分なストレスが解放され、より良い音の響きに変化していくこともあります。

ただ気を付けていただきたいのは、ニスが剥がれた場合、木材の地が出るまで放っておくと、汗や汚れが染み込んでしまいます。そうなる前にはニスの補修を行いましょう

低価格帯のバイオリンほど、取り扱いやすく塗装作業もしやすい硬めのニスが塗られることが多いですが、上級機種には柔らかいニスが採用され、つまり良いバイオリンほどこういった傾向が表れることがあります。
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まとめ
バイオリンの塗装に関する詳細を議論したり、その事を明確にする事が目的ではないし、バイオリンの塗装の大まかなスタンスを理解するためです。間違った解釈もあるかもしれないが、あくまでスピーカーの塗装につながるヒントとしてみて頂きたい。

現在分かっている事柄は、実はストラディバリウスであっても現在広汎に採用されているニスの成分や手法と大きく異なった点は少ないという事、その意味では伝統は途切れることなく連綿と続いている。

ある特定のニスのレシピを作るというよりも、木質や削りだした厚みなどとともに補完的に音調を整えるのがニスの役目であり、その時々によって柔軟にニスの仕様は調合され、加減されたという事なのだろうと推察される。 

木を削ったり。塗装をしていると、どこで終わればよいのか終着点が見えなくなってしまうのだけれども、古の名工達は、製作途中の削りだした響板の例えばタップ音から完成した時の音を確実にイメージでき、そのために必要とするモノを、確実に見出していたのだと想像している。
その目的を達成するために基本のニスや手順はあったのかもしれないが、実際は一つ一つ微妙に違っていたのではないだろうか。

秘密があるとすれば、多分、”過ぐることも無く足る事もない無く最良点を見出す感覚の中”にこそあるのだろう。

下地
ニカワかオイル どちらにしろ、本体の木にオイル?が浸み込んでいた。
この事は、個人的には大きな意味があるように思う。

例えば、ラッカー・ウレタンなどの塗膜は、剥離材やペーパーを使って剥ぐと、ぺロリと剥離し易いしまったく無垢の木肌が出てくる。つまり表面に乗っているだけである。
ところが。オイルニス・アルコールニス・カシューなどは、メイプルなど導管の無い木質であっても僅かながら中に浸み込んでいる。 表面波のコントロールという意味ではこれらの塗料の方がアドバンテージがあるように思う。

染料
バイオリンはピグメントとニスの色で全体の色合いを調整しているようである。
染料と音の関係は、今回調べた範囲ではあまり記述が無かったのだけれども、染料は木質の導管に浸みてその後除去できない事からも音への影響は、大きいのかもしれない。 

ニスの硬度
”柔らかいニスは、響きはまとまるが、柔らかすぎると音が弱く、締まらなくなる。
硬いニスは、耳元では魅力的でも音が遠くに飛ばなくなります”。
とあるバイオリン製作家がコメントしている。
塗膜の硬さが響きだけでなく遠達性まで左右するとは不思議な感じもするが、スピーカーと違って
バイオリンのボディーは振動板そのもので、魂柱によって表と裏それぞれの振動板がある領域まで同位相で振動する事を考えると振動面積は意外に大きくニスによる表面の僅かな振動の変化も、振動板全体では大きな違いなのかも知れない。
木の固有の性質を改質する事は出来ないが、塗装の段階を幾つかの層に分けたりに、ニス(硬度)の種類を変えているのは、第二の木目とも考えることができるし、その意味では合理的で、積極的なチューニングであるように思う。 

ニスのタイプ
オイルニス、アルコールニス の選択は、必要とする硬度・鳴りにチューニングするための手段であるようだ。どちらか良いかという事ではなく、作家の更に個々の楽器の状態によって選択されるという事なのだと思う。そのため両方使用する事もままあるようだ。

仕上がり
最終的な仕上がりは、音と共に考慮されるため、ニスの選択と音の調整は、個々の製作家の感性により異なる。

耐久性
音のため、非常に柔らかいニスののため、メインテナンスを前提としているようである。


次回はギターです。

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