このところ、スピーカーの塗装に大きく時間を取られてブログを更新出来ませんでした。塗装を始めると5時間於きに各面を塗装して、その間乾いた面の研ぎ出しをするという作業を延々と繰り返し、一週間で各面一回の塗装をする。これを30回~60回延々繰り返すと指紋も爪も無くなり缶詰の様な地獄の作業もやっと終わろうとしている。残すは仕上げ、これはこれで地獄やナ。 ところで今回バイオリンやギターの事を調べる内に気付いた事を試してみた。エンクロージャーの塗装の鍵はどうも内側に在る様で、結果は想像を超えて良かった。近々その詳細をまとめてみたいと思っている。
ところで、前回、ケーブルモニター募集と銘うったのですが、プラグ等の手配に時間が掛かり、やっと目途がつきそうです。
大きく変化する
前回のケーブル試聴モニターに関して 商品詳細をこちらのページに記載しました。
この”顕れるもの”の中で、大きく変化するとは、具体的にどの様に変わるのか。との問い合わせをいただきました。
音の変化を具体的に詳述するのは難しい事と、変化を際立たせるために、大袈裟な表現に為り勝ちです。そのために、ご自身で確認して頂くのが一番と思い、試聴モニターをする事にしたのです。
しかし、確かにただ良いから聴いてみてください、と言われても、”その具体的な方向を示してくれないと、興味も持てない”と御思いの方いらっしゃるでしょう。もう少し詳しくその変化をフィールドテストの時に頂いたコメントやエピソードなどを紹介いたします。
何が変わるのか
音色の変化・分解能に優れる・レンジが広い等 ケーブルの交換で期待されるこれらの変化よりも、もっと根源的な”音楽の在り様”が変わります。
たとえば、
オリジナルレコードの蒐集家は当然レコードに対して深い思い入れがあり、同じ録音のCDには触手が動きません。彼等の言葉を借りれば、CDは所詮劣後したコピーでしかない訳です。
プレーヤーも RCA70 やプレスト EMT927 を使いイコライザーも WV2 を使用しているような人達です。
その彼らが、スチューダ730のラインケーブルをEinsatz 【 アインザッツ 】 一セット交換して、こう云うのです。” これであれば、もう血眼になってオリジナル盤を探す必要も無いナ ”と。まァ、既に粗方蒐集は終えているのでしょうが。勿論、 後にアナログレコードもケーブルを交換する事によってオリジナル盤は更に魅力を増したのだけれども。
この評価・感想を以ってこのケーブルが圧倒的に優れていると云いたいわけでは在りません。人の感想は、自分の感想ではない事は当然ですし、好悪色々な評価がある事は世の常でもあります。しかし、このケーブルに興味をお持ちの慧眼であればこのエピソードから、何がしかの手掛りを理解して頂けるように思います。
”顕れるもの”
もう少し具体的な事柄で説明したいと思います。目指したといっても何らかの音を創り上げようとした訳ではありません。
オーディオにおける音楽再生は、多くの制約や限界が存在します。その限界を超える或いは個人の嗜好から様々なシステムや取り組みが行われる。これがオーディオの楽しみでもあるのですが、注意しなければならないのは、そこで語られる評価・言語は同じでも、概念ないし感覚を共有し得ないために、齟齬が多いという事有体に言えば”良い音”の実質は千変万化、人其々ということです。
それだけ、ユーザーからの要求・思いも多様であるという事なのだと思いますが、評価項目は自ずと細分化されたモノに為り勝ちです。個別のディテールに拘り森の把握を欠くことになってしまう。
生命が細分化されたメカニズムとして説明できないように、音楽も細分化して把握するよりは、総体として捉える事がより意味ある姿勢であると私たちは考えています。
音楽の総体それは”エナジー”あるいは浸透力、実在感といっても良いのかもしれません。
帯域が広いとか、中低域に厚みが有る、高域が素直に伸びている・音数が多い、表情が豊か、細かいニュアンスに乏しい・空間が広い、位置がわかる、細かな位置が空間に浮かぶ・・・
”木を見て森を見ず”あらゆる音の表現の一部に拘泥し、優劣をつける。肝心の音楽の再現は、より良くなったのでしょうか?分解能・細かい音の集積と、音楽のエネルギーを表出はまったく異なる性質のもので、過度に分析的な現代のアプローチは、音楽が持つ健やかさ・生命感から大きく乖離していると感じているのではないでしょうか。
ニュートラリティー
前節では細かいディテールに拘る事は見誤る要因になると書きましたが、ディテールが重要ではないと主張しているわけではありません。
音楽には様々な表情があり、音質の傾向を対比して語られます。 たとえば 明るい・暗い 輝かしい・渋い 柔らかい・硬い 優美・峻厳 シングルトーン・ハーモニー 鋭い・持続 拡散・収束 軽い・重い 音楽のジャンルで言えば 好く言われるのが ジャズ・クラッシック ピアノ打撃音・ヴァイオリン 摩擦音 アコースティック・エレクトリックなどなど。
理想的な音質のバランスは、ソースに拠って相反する要素・表情をどちらにも表現出来るかという事ではないでしょうか? 柔らかい音は柔らかく、鋭い音は鋭くという事です。 原音再生という事ではなくニュートラリティーが在るか無いかと言う意味です。
これらのキャラクターは、アンプ・ケーブル・カートリッジ・CD など機器の選択で有る程度は変化をさせる事は出来るのかもしれません。 しかし、この点のみに留意してチューニングをすると、どこかでデメリットが顕れる事も経験的に知っています。本質的なキャラクターはなかなか修正できない様です。
相反する質感をどちらにも表現出来るニュートラリティーは、実はハーモニックスバランスそのもので、同じものを異なる視点から表現しているに過ぎません。そしてハーモニックスバランスは、レスポンスそのものです。エナジーが最も再現できた時、相反する表現は縦横に音色は申し分なく再現され、空間ではなく、空間の支配力と空気の駆動力を聴かせます。 音楽の相反する表現をどちらにも表現出来るニュートラリティーはエナジーの再現なくしてはありえないのです。
巷間に語られるクラシック向き ジャズ向きなどと分類する必要がまったく無くなります。
この状態に至って、初めて音楽を楽しめるといえると思います。
良い録音と悪い録音
オーディオ機器を評価する場合に、その成果を表現するときに使われる常套表現。
”(達成された音は特徴を指摘し得ないほど)自然な音が得られた。そのために良い録音は益々
自然に再生されるが、悪い録音は(忠実に再現されるために)聴くに耐えない音に為ってしまう。”と
これに似た文言をどこかで目にした方もおありだろう。当初は私もこの言葉を額面とおりに受け取っていた。 確かに、録音の優劣の判断は聴けば直に判る。
しかし、其れは限定した条件の極限られた狭い判断でしかない事を判るのに随分と長い時間を経てからの事になる。
そもそも、先の表現は、悪い録音が良く聴こえるのは忠実度の観点から見てもおかしいし、それだけ忠実度と再現性が高いという事なのだろう。
しかし、ここにこそオーディオの音と現実の音を隔てている境界がある。と思うようになった。
レコード は、レーベルや製造国・原版の違いなど様々な違いがあり固有の音として語られ、悪い録音として取り上げるのも難しいので、上手く鳴らないと思っていたモノがどの様に変わるのかを高音質盤の経緯で記してみたいと思います。
例えばキングから発売されたスーパーアナログというレコードがあります。
皆さんはこのレコードにどのような印象をお持ちだろうか?詳細はこちら
この重量盤は、リードインの針音からして”コッ・コッ”と硬くダンプの効いた音で、今までのレコードの印象とは異なるものであった。帯域バランスも当然異なり今までのアナログレコードの方が遥かに耳当たりも良くアナログらしさに溢れて聴こえる。対する薄くぺらぺらな盤、例えばフィリップスの輸入盤などは、音は厚みのあるピラミッドバランスでバイオリンなどの弦の響きも瑞々しく不足はない。あえてスーパーアナログでなければとも思えなかった。
もう一例 ソニーのマスターサウンド
当初の印象では、レコード技術の粋を集めたという謳い文句どおりカッティングレベルは高いし鮮度は高いけれども音のバランスが不自然な感じがあり、プレーヤー・カートリッジを交換したりしてトライしたのだけれども、結局ノーマル盤の方が気持ち良く聴けた。
何となく釈然としないままに、これらの高音質盤を積極的に評価する事も無く、あまり聴く事も無いままであった。ところが、エナジーがキチンと再現されたとき世界が一変して、凄まじい低音の響きとアタックには、恐ろしささへ感じさせ言葉を失うほど違うのである。それなのに質感はナチュラルで際限の無いダイナミックスはトリップするのに充分で正に唖然とする。
本当に音が良くなってくると”悪い録音が悪く聴こえる”よりも今まであまり良いと思っていなかった”悪い録音のものが、極めて良く聴こえる”事の方が多いように思います。
浸透力あるいはエナジーの表出
人の心を動かすのは様々で、音色や空間の再現かもしれません。或いは、分解能や柔らかさ・味わいが深く琴線に触れる事もあるかもしれません。私達は、オーディオに第一に求められるのは、細分化された要素ではなく、全体性・身体性・生命感を感じさせる音の浸透力・エナジーの表出・空気の駆動力と思っています。
エナジーは、音の浸透力と言い換えても良いのかもしれませんが、現代のオーディオでは忘れられた音の在り様ですから、判って頂けないかも知れません。
先日、ある所でProject K2 S9900 を聴きました。コンプレッションドライバーを使用しているにも拘らず現代スピーカーの典型的な鳴り方で、音の浸透力・エネルギーの表出の再現の難しさを思いました。
この浸透力は、アンプにも、プレーヤーやCD、ケーブルやアクセサリーなど実はあらゆる物が影響を与えている事がわかりました。チューニングでは得る事が出来ない性質のもの、其々の機器なりが本質的に持っている運動能力のようなもので、音質のように、これを何かで加減する事は基本的に出来ない、
音のエネルギー・浸透力は音の分解能・情報量をいくら上げても得る事は出来ないのではないか。
エナジーは緻密なディーテールを伴って来るけれどもこの逆に、緻密なディーテールは必ずしもエナジーを伴って来ないとの印象を持っています。
違いは何か
モノが違うと云わしめる Einsatz 【 アインザッツ 】 何が違うのだろうか。
絶縁材 絹
ご存知のように、ケーブルの基本は導体と絶縁材です。気になっていろいろ調べていると思いがけないデータを見つけた。 <データは山本電機工業様から>
導体は以前のブログに記したのだけれども、ケーブルは絶縁材が不可避であり、このことは導体間でコンデンサーを形成するため、オーディオに於いてより重要なファクターは実は静電容量 比誘電率である事です。 つまり、絶縁材に何を使用するかという事です。
その絶縁材、現代のケーブルはテフロン、ポリプロ、ポリエチレンなどの合成樹脂を使用しており中でもフッ素形樹脂はその低比誘電率で高性能を謳っている。現在では、とりわけPTFEが比誘電率に優れているとして高性能を謳うケーブルに採用され、これに次ぐモノとしてポリプロピレンがコストメリットから採用されている。更に低容量にするために発泡性のものを採用する事もある。
その比誘電率 テフロン の諸特性は こちらを参照ください。
ヴィンテージケーブルは、絶縁材に綿・絹を使用している。
その比誘電率 は
絶縁材 シェラック
この当時、ヴィンテージといわれるケーブルの導体は、腐食防止のためにメッキではなくシェラックやエナメルでコーティングされている。ウエスタンのブラックエナメルが有名ですが、我々が採用したケーブルは、シェラックです。
シェラックは、ギターやバイオリン 家具の塗装に使われ絶縁性にも優れた天然素材のアルコール系樹脂ですが、塗膜はあまり強くないのが短所です。ところが今回採用したケーブルのモノはその事が信じられないほどに強固で、一箇所の塗膜を剥がすのにカッターなどの鋭利なモノでシゴキ且つペーパーで削ぎ落とす必要があり、処置には優に5分を要す程です。このために勿論導体は100年を経て新品の輝きを維持しています。参考のためにウエスタンのブラックエナメルは、カッター等で簡単に取り除く事が出来るし、強固さや手間、導体の状態も比較出来ない程違います。
マイクロフォニックノイズ
もう一点音質を左右する特性としてマイクロフォニックノイズがあります。”アンプの入力にケーブルを接続してオープンにした入力端を叩くとスピーカーから音が出てくる”オーディオマニアの間では良く知られた現象で、導体間と絶縁材がマイクロフォンになり機械的振動が電気信号となって出力されるためです。
これを防止するために、絶縁材と導体間に半導体層を設ければ良いのですが、そうすれば静電容量が大きくなってしまう。少しでも静電容量を小さくするために絶縁材を選定しているのに、この条件を満たす事は難しく二律背反の新たな問題を抱え込んでしまう。
ところが、絹の絶縁材は、実験すれば直ぐにわかるのですが、このマイクロフォニックノイズの発生がほとんど無いのです。
取り回し
テフロンやポリプロなど低容量性の素材は、高性能なモノほど硬くなる傾向がある。硬いために取り回しが大変で、軽量級のアンプでは持ち上がってしまうような事がある。小さなアールが取れないのでわざわざ長くしないと接続出来なかったりする。
固めの方が信頼感もあるのかも知れないが、ターミナルの負担やダメージを考えると柔らかい方が取り回しも良いし、マイクロフォニックノイズや様々な振動の影響を受け難いためケーブルインシュレーターも勿論不要で柔らかくて困る事は何一つ無いと思う。
まとめ
さて、Einsatz 【 アインザッツ 】は古さを売り物にしている訳ではありません。造りや内容は最先端のケーブルに比較しても優れている事はあっても遅れをとるところはまったくありません。
勿論 Einsatz 【 アインザッツ 】 一組のケーブルで上記に説明した音の変化が全て顕れるという事ではありませんが、このケーブル無くしては達成できない音があるという事です。
是非御自分のシステムで試して頂きたいと思います。システムの選択が正しければ驚くような変化を聴かせてくれるでしょう。
ところで、前回、ケーブルモニター募集と銘うったのですが、プラグ等の手配に時間が掛かり、やっと目途がつきそうです。
大きく変化する
前回のケーブル試聴モニターに関して 商品詳細をこちらのページに記載しました。
この”顕れるもの”の中で、大きく変化するとは、具体的にどの様に変わるのか。との問い合わせをいただきました。
音の変化を具体的に詳述するのは難しい事と、変化を際立たせるために、大袈裟な表現に為り勝ちです。そのために、ご自身で確認して頂くのが一番と思い、試聴モニターをする事にしたのです。
しかし、確かにただ良いから聴いてみてください、と言われても、”その具体的な方向を示してくれないと、興味も持てない”と御思いの方いらっしゃるでしょう。もう少し詳しくその変化をフィールドテストの時に頂いたコメントやエピソードなどを紹介いたします。
何が変わるのか
音色の変化・分解能に優れる・レンジが広い等 ケーブルの交換で期待されるこれらの変化よりも、もっと根源的な”音楽の在り様”が変わります。
たとえば、
オリジナルレコードの蒐集家は当然レコードに対して深い思い入れがあり、同じ録音のCDには触手が動きません。彼等の言葉を借りれば、CDは所詮劣後したコピーでしかない訳です。
プレーヤーも RCA70 やプレスト EMT927 を使いイコライザーも WV2 を使用しているような人達です。
その彼らが、スチューダ730のラインケーブルをEinsatz 【 アインザッツ 】 一セット交換して、こう云うのです。” これであれば、もう血眼になってオリジナル盤を探す必要も無いナ ”と。まァ、既に粗方蒐集は終えているのでしょうが。勿論、 後にアナログレコードもケーブルを交換する事によってオリジナル盤は更に魅力を増したのだけれども。
この評価・感想を以ってこのケーブルが圧倒的に優れていると云いたいわけでは在りません。人の感想は、自分の感想ではない事は当然ですし、好悪色々な評価がある事は世の常でもあります。しかし、このケーブルに興味をお持ちの慧眼であればこのエピソードから、何がしかの手掛りを理解して頂けるように思います。
”顕れるもの”
もう少し具体的な事柄で説明したいと思います。目指したといっても何らかの音を創り上げようとした訳ではありません。
オーディオにおける音楽再生は、多くの制約や限界が存在します。その限界を超える或いは個人の嗜好から様々なシステムや取り組みが行われる。これがオーディオの楽しみでもあるのですが、注意しなければならないのは、そこで語られる評価・言語は同じでも、概念ないし感覚を共有し得ないために、齟齬が多いという事有体に言えば”良い音”の実質は千変万化、人其々ということです。
それだけ、ユーザーからの要求・思いも多様であるという事なのだと思いますが、評価項目は自ずと細分化されたモノに為り勝ちです。個別のディテールに拘り森の把握を欠くことになってしまう。
生命が細分化されたメカニズムとして説明できないように、音楽も細分化して把握するよりは、総体として捉える事がより意味ある姿勢であると私たちは考えています。
音楽の総体それは”エナジー”あるいは浸透力、実在感といっても良いのかもしれません。
帯域が広いとか、中低域に厚みが有る、高域が素直に伸びている・音数が多い、表情が豊か、細かいニュアンスに乏しい・空間が広い、位置がわかる、細かな位置が空間に浮かぶ・・・
”木を見て森を見ず”あらゆる音の表現の一部に拘泥し、優劣をつける。肝心の音楽の再現は、より良くなったのでしょうか?分解能・細かい音の集積と、音楽のエネルギーを表出はまったく異なる性質のもので、過度に分析的な現代のアプローチは、音楽が持つ健やかさ・生命感から大きく乖離していると感じているのではないでしょうか。
ニュートラリティー
前節では細かいディテールに拘る事は見誤る要因になると書きましたが、ディテールが重要ではないと主張しているわけではありません。
音楽には様々な表情があり、音質の傾向を対比して語られます。 たとえば 明るい・暗い 輝かしい・渋い 柔らかい・硬い 優美・峻厳 シングルトーン・ハーモニー 鋭い・持続 拡散・収束 軽い・重い 音楽のジャンルで言えば 好く言われるのが ジャズ・クラッシック ピアノ打撃音・ヴァイオリン 摩擦音 アコースティック・エレクトリックなどなど。
理想的な音質のバランスは、ソースに拠って相反する要素・表情をどちらにも表現出来るかという事ではないでしょうか? 柔らかい音は柔らかく、鋭い音は鋭くという事です。 原音再生という事ではなくニュートラリティーが在るか無いかと言う意味です。
これらのキャラクターは、アンプ・ケーブル・カートリッジ・CD など機器の選択で有る程度は変化をさせる事は出来るのかもしれません。 しかし、この点のみに留意してチューニングをすると、どこかでデメリットが顕れる事も経験的に知っています。本質的なキャラクターはなかなか修正できない様です。
相反する質感をどちらにも表現出来るニュートラリティーは、実はハーモニックスバランスそのもので、同じものを異なる視点から表現しているに過ぎません。そしてハーモニックスバランスは、レスポンスそのものです。エナジーが最も再現できた時、相反する表現は縦横に音色は申し分なく再現され、空間ではなく、空間の支配力と空気の駆動力を聴かせます。 音楽の相反する表現をどちらにも表現出来るニュートラリティーはエナジーの再現なくしてはありえないのです。
巷間に語られるクラシック向き ジャズ向きなどと分類する必要がまったく無くなります。
この状態に至って、初めて音楽を楽しめるといえると思います。
良い録音と悪い録音
オーディオ機器を評価する場合に、その成果を表現するときに使われる常套表現。
”(達成された音は特徴を指摘し得ないほど)自然な音が得られた。そのために良い録音は益々
自然に再生されるが、悪い録音は(忠実に再現されるために)聴くに耐えない音に為ってしまう。”と
これに似た文言をどこかで目にした方もおありだろう。当初は私もこの言葉を額面とおりに受け取っていた。 確かに、録音の優劣の判断は聴けば直に判る。
しかし、其れは限定した条件の極限られた狭い判断でしかない事を判るのに随分と長い時間を経てからの事になる。
そもそも、先の表現は、悪い録音が良く聴こえるのは忠実度の観点から見てもおかしいし、それだけ忠実度と再現性が高いという事なのだろう。
しかし、ここにこそオーディオの音と現実の音を隔てている境界がある。と思うようになった。
レコード は、レーベルや製造国・原版の違いなど様々な違いがあり固有の音として語られ、悪い録音として取り上げるのも難しいので、上手く鳴らないと思っていたモノがどの様に変わるのかを高音質盤の経緯で記してみたいと思います。
例えばキングから発売されたスーパーアナログというレコードがあります。
皆さんはこのレコードにどのような印象をお持ちだろうか?詳細はこちら
この重量盤は、リードインの針音からして”コッ・コッ”と硬くダンプの効いた音で、今までのレコードの印象とは異なるものであった。帯域バランスも当然異なり今までのアナログレコードの方が遥かに耳当たりも良くアナログらしさに溢れて聴こえる。対する薄くぺらぺらな盤、例えばフィリップスの輸入盤などは、音は厚みのあるピラミッドバランスでバイオリンなどの弦の響きも瑞々しく不足はない。あえてスーパーアナログでなければとも思えなかった。
もう一例 ソニーのマスターサウンド
当初の印象では、レコード技術の粋を集めたという謳い文句どおりカッティングレベルは高いし鮮度は高いけれども音のバランスが不自然な感じがあり、プレーヤー・カートリッジを交換したりしてトライしたのだけれども、結局ノーマル盤の方が気持ち良く聴けた。
何となく釈然としないままに、これらの高音質盤を積極的に評価する事も無く、あまり聴く事も無いままであった。ところが、エナジーがキチンと再現されたとき世界が一変して、凄まじい低音の響きとアタックには、恐ろしささへ感じさせ言葉を失うほど違うのである。それなのに質感はナチュラルで際限の無いダイナミックスはトリップするのに充分で正に唖然とする。
本当に音が良くなってくると”悪い録音が悪く聴こえる”よりも今まであまり良いと思っていなかった”悪い録音のものが、極めて良く聴こえる”事の方が多いように思います。
浸透力あるいはエナジーの表出
人の心を動かすのは様々で、音色や空間の再現かもしれません。或いは、分解能や柔らかさ・味わいが深く琴線に触れる事もあるかもしれません。私達は、オーディオに第一に求められるのは、細分化された要素ではなく、全体性・身体性・生命感を感じさせる音の浸透力・エナジーの表出・空気の駆動力と思っています。
エナジーは、音の浸透力と言い換えても良いのかもしれませんが、現代のオーディオでは忘れられた音の在り様ですから、判って頂けないかも知れません。
先日、ある所でProject K2 S9900 を聴きました。コンプレッションドライバーを使用しているにも拘らず現代スピーカーの典型的な鳴り方で、音の浸透力・エネルギーの表出の再現の難しさを思いました。
残念ながら、そこにはエネルギーの表出・浸透力は感じられなかった。これらの描き出す音の世界は、揺らぎのない空間に、音像・分解能に優れていても音色感に乏しい音、言葉を変えるならばスタティックな蝋人形のように生命感が無い様に感じました。浸透力はホーンスピーカーの属性と思われているこのケーブルに換えることが出来たらともしやとも想像していましたが。
この浸透力は、アンプにも、プレーヤーやCD、ケーブルやアクセサリーなど実はあらゆる物が影響を与えている事がわかりました。チューニングでは得る事が出来ない性質のもの、其々の機器なりが本質的に持っている運動能力のようなもので、音質のように、これを何かで加減する事は基本的に出来ない、
音のエネルギー・浸透力は音の分解能・情報量をいくら上げても得る事は出来ないのではないか。
エナジーは緻密なディーテールを伴って来るけれどもこの逆に、緻密なディーテールは必ずしもエナジーを伴って来ないとの印象を持っています。
違いは何か
モノが違うと云わしめる Einsatz 【 アインザッツ 】 何が違うのだろうか。
絶縁材 絹
ご存知のように、ケーブルの基本は導体と絶縁材です。気になっていろいろ調べていると思いがけないデータを見つけた。 <データは山本電機工業様から>
導体は以前のブログに記したのだけれども、ケーブルは絶縁材が不可避であり、このことは導体間でコンデンサーを形成するため、オーディオに於いてより重要なファクターは実は静電容量 比誘電率である事です。 つまり、絶縁材に何を使用するかという事です。
その絶縁材、現代のケーブルはテフロン、ポリプロ、ポリエチレンなどの合成樹脂を使用しており中でもフッ素形樹脂はその低比誘電率で高性能を謳っている。現在では、とりわけPTFEが比誘電率に優れているとして高性能を謳うケーブルに採用され、これに次ぐモノとしてポリプロピレンがコストメリットから採用されている。更に低容量にするために発泡性のものを採用する事もある。
その比誘電率 テフロン の諸特性は こちらを参照ください。
4フッ化エチレン樹脂 | 2 |
ヴィンテージケーブルは、絶縁材に綿・絹を使用している。
その比誘電率 は
絹 | 1.3~2 |
絶縁材 シェラック
この当時、ヴィンテージといわれるケーブルの導体は、腐食防止のためにメッキではなくシェラックやエナメルでコーティングされている。ウエスタンのブラックエナメルが有名ですが、我々が採用したケーブルは、シェラックです。
シェラックは、ギターやバイオリン 家具の塗装に使われ絶縁性にも優れた天然素材のアルコール系樹脂ですが、塗膜はあまり強くないのが短所です。ところが今回採用したケーブルのモノはその事が信じられないほどに強固で、一箇所の塗膜を剥がすのにカッターなどの鋭利なモノでシゴキ且つペーパーで削ぎ落とす必要があり、処置には優に5分を要す程です。このために勿論導体は100年を経て新品の輝きを維持しています。参考のためにウエスタンのブラックエナメルは、カッター等で簡単に取り除く事が出来るし、強固さや手間、導体の状態も比較出来ない程違います。
マイクロフォニックノイズ
もう一点音質を左右する特性としてマイクロフォニックノイズがあります。”アンプの入力にケーブルを接続してオープンにした入力端を叩くとスピーカーから音が出てくる”オーディオマニアの間では良く知られた現象で、導体間と絶縁材がマイクロフォンになり機械的振動が電気信号となって出力されるためです。
これを防止するために、絶縁材と導体間に半導体層を設ければ良いのですが、そうすれば静電容量が大きくなってしまう。少しでも静電容量を小さくするために絶縁材を選定しているのに、この条件を満たす事は難しく二律背反の新たな問題を抱え込んでしまう。
ところが、絹の絶縁材は、実験すれば直ぐにわかるのですが、このマイクロフォニックノイズの発生がほとんど無いのです。
取り回し
テフロンやポリプロなど低容量性の素材は、高性能なモノほど硬くなる傾向がある。硬いために取り回しが大変で、軽量級のアンプでは持ち上がってしまうような事がある。小さなアールが取れないのでわざわざ長くしないと接続出来なかったりする。
固めの方が信頼感もあるのかも知れないが、ターミナルの負担やダメージを考えると柔らかい方が取り回しも良いし、マイクロフォニックノイズや様々な振動の影響を受け難いためケーブルインシュレーターも勿論不要で柔らかくて困る事は何一つ無いと思う。
まとめ
さて、Einsatz 【 アインザッツ 】は古さを売り物にしている訳ではありません。造りや内容は最先端のケーブルに比較しても優れている事はあっても遅れをとるところはまったくありません。
勿論 Einsatz 【 アインザッツ 】 一組のケーブルで上記に説明した音の変化が全て顕れるという事ではありませんが、このケーブル無くしては達成できない音があるという事です。
是非御自分のシステムで試して頂きたいと思います。システムの選択が正しければ驚くような変化を聴かせてくれるでしょう。
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