2013年7月5日金曜日

スピーカーは、楽器か?変換機か? スピーカーの塗装 ギター編 #1.2

後半に”スピーカーは、楽器か?変換機か?”を取り上げているので興味のある方はそちらを読んで頂きたい。

世界で最も愛されるポピュラーな楽器ギター。クラシック・フラメンコ フォークギター エレクトリック・ギター などなど多くの派生モデルがある。其々個性的ではあるが、既に確立したスタイルでもある。それぞれに魅力があり、何時の間にか数が増えてしまうコレクターの気持ちが判ろうというものだ。

ハンドメイドのギターを楽器店に見にいくと、何ともいえない懐かしさと清々しさを感じさせる芳香にしばし陶酔する。この香りが想起させる失われた時は面映い思い出でもある。木の香りとともにそれが塗装の匂いであると知ったのは、随分と後の事であった。それに加えて、ギターの手軽な大きさのボディーは、木目や木の質感を楽しめる絶妙な大きさで、木目の美しさに気付かされたのもギターであったように思う。

ハカランダ・ローズウッド・ココボロ・ジリコテ・スプルース・スネークウッド・ブラックウッド・オバンコール  ウクレレに使われるハワイコナ などの美しい木種 メイプルの持つバーズアイ キルテッド ベアークロー トラ目 バールなどの杢目 知るほどにその多様な美しさに魅せられてしまったのだった。バイオリンは決まった木種でほぼ固定されているのと比べても、ギターは多様でこの点も魅力の一つではある。とはいえ他方にはハカランダ信仰も根強い。

少し脱線するが、最も多様な木種を駆使しているのは、ビリヤードのハンドメイドのキューである。機会があれば是非見て頂きたい。その細工と仕上げは見るだけでも充分な価値があると思う。

スピーカーの仕上がりも、ギターの様に美しい仕上げにしたいと思っていた。前回の続きで今回はギターの塗装を取り上げる。塗装に関しては、どのタイプとも共通するところが多いのだけれども、クラシックギターを中心に見てみたい。塗装は多くの研究がなされており、その概略をメモする。この流れからから、スピーカーの塗装を概観し自分なりの考えを纏めるつもりである。
次作は塗装の手順と経過も写真とともにアップしたい。


http://www.amy.hi-ho.ne.jp/hiromi-ishii/contents/music/guiter/mente/paint.html



ギターの塗装 種類と用途
現在 行なわれているギターの塗装は、セラック ラッカー カシュー ウレタン オイルフィニッシュ である。それぞれの詳細は・・・
多くの専門家が作成された資料を防備録としてネットからまとめたようなものなので、この項目は興味のある人だけ読んでください。

シェラック(shellac)セラック
シェラック(セラックと表記されることもある)は、ラックカイガラムシが豆科・桑科の樹木に寄生して、樹液を吸って体外に分泌した樹脂状物質を精製した天然のポリエステル樹脂で、成分は樹脂酸エステルである。
クラシック・フラメンコ の手工品は、今もセラックが主流である。出来るだけ薄い方が良いとされているようだ。ギターの塗装はバイオリンと異なりニスの色のみで色を出しステイン等で着色をしない事が特徴であるようだ。1925年頃までのMartinギターはこのシェラックで塗装されている。

このシェラック調べ始めると、古くから、日常生活の中で色々な物に使われている事が判る。

日本シェラックの沿革には、
1939年にシェラックの国産化に着手し、現在もチョコレートや砂糖菓子のつや出し剤、オレンジ、レモン、リンゴ等の保護皮膜剤等の食品、錠剤、丸薬などの腸溶性皮膜剤、薬臭の除去剤等の医薬品、電気関係用絶縁材、接着剤、積層板、基盤等々色々な分野で使われている。かつてはSPレコードの原料にも使われていた。
とある。

天然樹脂として唯一の熱硬化性樹脂。
常温でアルコール(メタノール)にゆっくりではあるがよく溶ける。熱に容易に溶融するが一度熱硬化したあとは、熱や溶剤にも侵されなくなる。耐油性。電気的に不導体。
水に不溶であり、アルコール以外の有機溶剤にもほとんど不溶または膨潤する等の特性がある。
塗装が容易で乾燥が早く、光沢がよいが、塗膜が柔らかく、熱・摩擦に弱い


この特徴を利用して電気絶縁材やケーブルの絶縁材として数多く利用されて、知らないだけでオーディオにも身近なところにも使われていた。

ギター用ニスの基本は、セラック(ラックカイガラムシの抽出液)である。
溶媒はアルコールを使用し 木部の染色はしない。色合いは、ラックの精製度合いや産地によるニスの色自身の違いにより調整する。ラック染料 ラック蝋の精製度合いに応じて様々な呼称(シェラックの種類を参照)がありその目的により選択される。

<ヴァーニッシュと天然樹脂 からの引用です>
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シェラックの種類
シェラック(Shellac,Gomme Lacca,Gum Lac) 精製の度合いにより、いろいろなグレードがある。シェラックは楽器用としてはメタノールを10%含んだエタノール(メチルスピリッツ)に溶解することが多い。
国内の酒税法により変性アルコールを工業的に使用することが、優先しているわけではない。溶解性としてメチルスピリッツを使用した方が良いということである。

1.スティックラック 採れた状態のシェラック。枝から剥ぎ取った跡が残る。この状態ではメタノールには溶解するが、エタノールに溶けにくい。ラック色素とラック蝋を含んでいる。何年も純粋なエタノールに浸けると芳香のある赤味の強い溶液となる。



2.ガーネットラック(板状に成形)スティックラックを粉砕し丸く固めただけのものを言うが、写真のように板状のものもある。
性質はほとんどステイックラックと変わらない。このインドのパンの
「ナン」に似た板状のシェラックをガーネットラックと呼んでいたようである。



3.ボタンラック スティックラックを熱をかけて溶融濾過の後、圧延したもの。陶器のような透明の状態である。大きさは直径7cm。
蝋分を含み、赤い色素も分離していない。




4.シードラック(ステイックラックの粉砕)スティックラックを粉砕しただけのものであるが、エタノールには良く溶ける。蝋を含むがこのままヴァイオリン用に使用すると音質はとても良い
また赤味もあり、ニスを色付けしたときの「深み」が増す。



5.レモンラック(シードラックの不純物濾過)シードラックを熱溶融し濾過し、固めたもの。蝋と色素は抜いていない。エタノール溶液の濾過性が悪い。
熱をかけた後のシェラックはやや柔らかくなるが、加熱すると160℃以上からとが分かった。



6.ガーネットラック(レモンの脱蝋)
精製の工程で脱蝋されたもの。エタノールに溶解すると飴状に容器底に溜まり、溶けにくい。絶えず撹拌しなければシェラックのグレードの中では最も溶けにくいと云える。



7.ブロンズラック(脱色)
ガーネットと漂白の間のグレードで脱色シェラックと呼ばれる。
ラック色素はほぼ抜けている。溶液の色は濃いが、塗布した色合いはほとんど漂白に近い。



8.ホワイトラック(漂白)
脱蝋-脱色-漂白の工程を経たシェラック。エタノールに溶けやすい。使用量はこのグレードが最も多いが、音質は精製するごとに低下する。これはヴァイオリン製作家が知っている事である。



9.エンジェルラック 脱蝋していない、オレンジ色の微細な板状。
詳細は不明。フワフワした鱗片状で脱蝋、脱色していない。
溶液には蝋分が残る。ヴァイオリン関係で使用される特殊なグレードと思われる。



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ラックカイガラムシ 
シェラックを生み出すカイガラムシは、ラック・ビートル、臙脂虫(えんじむし)とも呼ばれる
半翅目カイガラムシ科、学名:Laccifer lacca、英名:Purified Shellac)
精製セラック:Lacca Depurata(日本薬局方)
成虫の雌は、体長約5~8mm、雄は1.25mm。

カイガラムシという和名は、形が貝殻ににていることに由来する。ラックという名称は、サンスクリット語やヒンディー語の10万という数が語源だそうで、これは虫が微小であるため、かぞえるのが困難だからということである。一般に、果樹や観葉植物の害虫として知られるカイガラムシの仲間のなかで、ラックカイガラムシは有用昆虫としてその巣・分泌物の塊をラックと呼び、染料、薬、接着剤、塗料など、世界中でさまざまな用途に使われてきた。

臙脂(えんじ) 
ラックカイガラムシの樹脂状の分泌物からとれた染料。
この染料は「本草綱目」に「紫鉱」と記され、正倉院の宝物としても保存されているとか。

採取された原料から虫殻や木質、水溶性色素などを除去して製品化するが、水溶性色素は回収されてラックダイと呼ばれ、食用色素や染料として使用される。
(要するに、天然色素と言う表示がある物:食紅なのである。カニ蒲鉾や氷イチゴの赤色もこのカイガラムシだそうな…)

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ラッカイン酸 アントラキノン系。

溶解性は非常に低い。
耐熱、耐光性はコチニール色素と同等で、非常に優れている。
酸性で橙色、中性で赤色を呈する。たんぱく質で紫変するが、色調安定剤(ミョウバン、酒石酸ナトリウムなど)で防止することができる。鉄イオンに対しては、pH 4以下で変色する。
 

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フレンチ・ポリッシュ(French polish)
シェラックをアルコールで溶かし、タンポで擦り込んでいく古典的な塗装方法。
高級バイオリン等では一般的に用いられる、音響的には非常に優れた塗装とされている。
塗装面は十数ミクロンと極めて薄く美しいが、高度な技術と労力が要求され、逆に塗膜の薄さから保護するという意味では弱く傷付き易く、熱や溶剤に弱いので、慎重な取り扱いが必要となる。
原料の価格も高いので、必然的に高級楽器に用いられることになる。

1900年頃までのMartinギターはこの技法で塗装されている。
国産ギターでは注文生産品レベルでないと目にしない。

アルコールで抽出したセラックを溶解させたものをタンポで何度も刷り込んでゆく塗装方法
で、ネット上に数多くの実例があるので、参考にして頂きたい。

LMI のホームページに記載 
    http://www7b.biglobe.ne.jp/~hello_hide/guitar/finish/lmi/shellac_lmi.html

French Polising
    http://www.milburnguitars.com/fpbannerframes.html

アコースティック ギター専門店
  http://guitar--parts.net/goods/8010.html

手工ギターの主流である。


ラッカー(lacquer):
塗装楽器の塗装では単に「ラッカー」と称されることが多いが、ラッカーは「速乾性を持った塗料」の総称である。
楽器で「ラッカー」と言った場合は、通常、「ニトロセルロース(Nitrocellulose:硝化綿)ラッカー」を指すが、アクリルラッカーやウレタンラッカー(塗装業界では2液性ウレタン塗料:D/Dラッカーと呼ぶ。)も存在する。
つまり広義では前述のポリウレタン塗装もラッカー塗装の一種なのである。

2液性ウレタン塗料はドイツのバイエル社が開発し、そのイソシアネ-ト成分をDesmodur、ポリ成分をDesmophenと称したので、頭文字を取って「D/Dラッカー」と呼ばれる。
ニトロセルロースラッカーは、シェラックに似た塗料として今世紀初頭に開発された。
ラッカーの“Lac”はシェラックの“Lac”ラックカイガラムシ(ラック・ビートル)に語源を発している。

「ニトロセルロースラッカー」は、植物由来である「セルローズ樹脂」を原料に合成した樹脂で、戦前から高級アコースティックギターの塗料として多く使われている。
主に吹き付け塗装で使われ、木に染み込み易く、薄く美しい塗装面が得られる楽器に向いた塗料であるが、仕上げに手間が掛かる上に比較的塗装面が脆く、慎重に扱う必要がある。
ビンテージギターに発生する、ラッカーチェックと呼ばれる細かいひび割れはニトロセルロースラッカーの特性から来る物である。

ラッカシンナー 乾燥が早く塗膜が固く、耐水性・耐薬品性に優れるが、ひび割れしやすい。
ラッカーという呼称で呼ばれている物は数種類あり、マーチン ギブソンなどが採用していた塗料でニトロセルロースラッカーを指している。


ラッカー塗装の実際 tatuzo shiga さんのホームページから
              塗装1
             塗装2


1926年頃以降のMartinギターは、一部の機種を除いてニトロセルロースラッカーで塗装されている。
国産ギターでは“ラッカー仕上げ”が高級品の代名詞のように扱われる。

カシュー
”テレピン油・カシューシンナー塗膜は弾力に富み、耐水性・耐熱性・耐薬品性に優れるが、
塗装が難しい”とされているようです。
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身近なことで案外知られていませんが、カシュ-塗料の元、カシュ-樹脂は”カシュ-ナッツ”の殻から搾りだした油が原料です。”カシュ-ナッツ”はカシュ-塗料の原料を含む殻に守られてカシュ-の樹に育つのです。カシュ-の樹は漆科の植物ですが、その油は漆のようにカブレることはありません。しかし、その油を原料とするカシュ-塗料は漆に似た性質を持ち、その肉持ちのあり、光沢あふれる塗膜は一見漆と見分けがつかないくらいです。カシュ-塗料のことを”カシュ-漆”と呼んだりするのはその為です。

75%以上の高樹脂分(通常の塗料は30~40%)があり、ふっくらとした肉持ち感溢れる仕上がりが出来ます。

また、表面張力が大きく、レべリングが良い為、始めての方でも平滑な張りのある塗り上がりが得れれます。その塗膜は高硬度でありながら弾力性のある、といった理想的な塗膜となり、耐水性、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性に大変優れています。
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日本の名工と言われた河野ギター他がこの塗料を使用しているが、響板だけはセラックにしている作例もある。ネックやバック・サイドなどはセラックよりも耐久性があり且つ木目が深く浮き出るような仕上がりである。

ガンスプレーも可能であるが、一般的には刷け塗りで施工する。乾きが遅く濃度の調整が難しい。
確かにレべリングは良いがその分埃の影響を受けるため、毎回の面出しは想像以上に大変である。
多層塗りをすると実は、事前の塗膜の状態が残ってしまい、きれいに仕上げるのは難しい。
ピアノブラック仕上げは、独特の深い艶と、漆塗りよりも更に奥行きを感じさせる素晴らしい仕上がりと成る。


ポリウレタン(PU:Poryurethane)
ポリウレタンはプラスチック材料のひとつでウレタン結合を有するポリマーの総称。
ウレタン結合はイソシアネート基と、水酸基などの活性水素を有する化合物との付加反応により生成され、イソシアネート基は非常に反応性に富んでいるためこの反応は加熱しなくても進行し、一度反応すると非常に安定な構造をとるという大きな特徴がある。

1959年デュポン社(商標“ライクラ”)により製品化され、日本ではアメリカとの技術提携により1963年から工業生産されている。
繊維製品で“スパンデックス”と呼ばれるものもこのポリウレタンである。
一口にポリウレタンと言ってもその外見は繊維、発泡体、フィルム、弾性体、粉末、溶液、エマルジョンなど様々な形を取る。
この特色を生かし、樹脂成型品、建材、接着剤、塗料、衣料品などの幅広い分野で利用されている。

楽器では廉価版から中級品程度まで、多くの楽器の塗装に用いられる合成樹脂塗料。
通常は吹き付け塗装で仕上げられる。
非常に強靱で弾力性に富んだ樹脂塗料で、丈夫で艶のある塗装面になるが、反面、どうしても塗膜が厚くなりがちで、木本来の音を妨げてしまう傾向がある。
しかしながら、手荒に扱われる事の多い一般の初中級者用モデルや、野外のライブなどの悪条件で使われる楽器には適しているとも言える。

カタログに“ラッカー仕上げ”と明記されないギターは概ねポリウレタン塗装である。

ウレタンシンナー 塗膜は硬度、耐薬品性も良く、また耐摩耗性は大きいが、厚くなりやすい。
汎用品はこの塗料を使用している。ガンでの吹き付けで施工される。塗膜は一様で、プラスティックやキャンディーのようなつるつるした質感である。 剥がれる時は、膜が捲れるように剥がれて行く。剥離材で剥ぐと一挙に剥がれてしまう。木質の上に乗っているだけという印象である。

部分的な補修・タッチアップは難しい。

オイルフィニッシュ
イギリスの製作家 ケビン・アラム クリストファー・ディーン などが響板の僅かな響きも阻害しないようにとオイル仕上げのギターを製作している。現在では、イギリスの作家のみが採用しているようである。

写真では判りにくいですが、艶の無いさらさらとした質感です。

ユリア樹脂
世界的な名器とされるハウザーはユリア樹脂を使用しているが、尿素樹脂・メラミンアルキッド樹脂のようだが、良く判らないので判り次第加筆したい。 ただセラックの不満からこの合成樹脂にしたとの記述があるので興味のあるところだ。この塗料を使用しているのは、ハウザーだけのようである。

ギター塗装のまとめ
ここでの考察は、塗料の優劣をつける事では無く、スピーカーにとって最適な塗装、木目の出方、耐久性、音の傾向を掴んでスピーカーの塗装への足掛りとすることを目的としている。

ギターは比較的音量が小さいため、より遠達性と音量の増大を目指して、今でも様々な構造や工夫が試みられている。 響板を二重構造にしたダブルトップ。 ブレーシングはトーレスを始祖とするオーソドックスなファンブレ-スから ラティスブレース カーボンファイバーの使用 など。
この点がスタイルが略決まっているバイオリンと異なっている。

これら、遠達性と音量の増大 を目的とした構造的なバリエーションは数多く試みられているが、この目的のために選択されている塗装は、オーソドックスなセラックによるフレンチポリッシュが圧倒的に支持されている。フラメンコギターでもセラックが支持されている。

上記に取り上げた塗装の種類が、論争の対象となるのが、第一に塗膜の薄さである。
ギターはどのタイプの物であれ、特にこの点が重視される。
理由としては、木の響きを出来るだけ殺さないためとされている。

バイオリンのように製作家ごとのレシピほど多岐ではなく、手法もほぼ同じようである。
これ程にセラックが支持されるのは、何より薄い塗膜で軽い仕上がりに出来る事である。
楽器にとって塗膜が薄い事が志向され、取分けギターのような音量の出ない撥弦楽器にとって重要な要素である。 フォークギターでも事情は同じで、ウェブでは次のような質問がされている。

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ニトロ・ラッカーは本当に最高か?

ラッカー塗装は本当にギターにとってベストなのですか?

ポリとウレタンは違う

塗装の質問や指定で"ポリ塗装"と"ウレタン塗装"が"="になっている方が多いんですよね、確かに"ポリウレタン"と言う塗料で塗装致しますので当らずとも遠からずではあるんですけど(笑)

一般的に"ポリ塗装=分厚くて安い"と言うイメージの物は"ポリウレタン"ではなく"ポリエステル"塗装なんですよ。


安価なギターでぶつけたりするとボロッと塗装が"欠ける"あれですね。
ところが同じポリでも"ウレタン"はかなりラッカー寄りで塗装も非常に薄い物が殆どなんです。
塗装の厚みが違うのは塗料の"硬化スピード"の違いにより塗装方法が異なるからです。

ポリエステルと言う塗料は硬化の時間が非常に短く硬質に仕上がります。
ですから一度に分厚く塗装しても硬化スピードが速いので空気に触れている表面と生地に近い中側との"硬化のタイムラグ"が無いんですね。

このタイムラグが大きいと表面が乾ききってしまう為に中側がいつまでたっても乾燥しなかったり、ピンホールや気泡等発生してしまうのです。
ですから量産品は工程の少なくて済む"ポリエステル塗装"をしているんですね。

対して"ウレタン"は硬化スピードがあまり速くないので厚塗りをしてしまいますと上記のようなトラブルが発生してしまいます。
ですから"ウレタン塗装"に関してはラッカーと同じように薄く吹き重ねて塗装を致しますので"無駄な吹き着け"が無く薄い仕上がりになっているんです。

しかも塗料自体はラッカーよりも高価なんですよ(笑)
では何故ラッカーの方が値段が高いのか?

やはりウレタンもラッカーと比べれば塗膜は硬質なので組み込み時や作業する際の扱いが楽なのと、ラッカーよりも硬化スピードが早い為にちょっとだけ塗膜は厚いんです、ですから作業工程も多少効率的ではあるんですね。

でも、ほんのちょっと厚いだけですよ、0.何㍉と言う世界でほぼ同じ程度の厚みなんです。
それこそポリエステル塗装ですと3㍉位あるのでは?これはもはや"コーティングでは?"と思ってしまう位の物がありますので其処まで行ってしまいますと明らかに"生鳴り"に違いが出てしまいますが、ウレタンでしたら出音は殆ど変わらないと考えて頂いて大丈夫なのです!

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スピーカーは、楽器か?変換機か?
楽器の事や塗装の事を調べていると、自然に次の疑問が出てくる。
オーディオにおける”スピーカーは楽器であるか変換機であるか”という事である。
立場によって、その分岐点は曖昧にも見えるし、明快にも見える。ステレオタイプのテーマで、個人的な嗜好で語られている事が多い。

唐突かも知れないが、少し視点を変えてみよう。楽器のカテゴリーに関わらず、演奏者に「理想の楽器は?」と問うと、返ってくる答えは・・

・音が良く通る事
・音が良く響く事
・演奏者の細かい意図を反映してくれる事(豊かな音色の変化・豊かな音量の変化)

カテゴリーによっては、その意味するところは異なるのかも知れないが、この答えはスピーカーに望む事と同じではではないだろうか。

この事を難しく解釈せずに、素直に解釈すればよいと思う。人が、純粋に音に対して期待するのは、楽器であれスピーカーであれ同じ性質のモノを良いと判断していると云う事である。
更に、解釈の枠を広げると、楽器も演奏者の”内的音楽”を音として表現するための変換機であり、スピーカーはメディアの”内在音楽”を音として表出するための変換機である。最終的に表出された”音”で評価すると、楽器と変換機の間には大きな乖離はないと思う。

”スピーカーは、楽器であるか変換機であるか”という設問自体が誤っているのではと思えてくる。

楽器の塗装が、ギターであれヴァイオリンであれ、多分他の楽器でも、油絵や、家具も同じ手法のヴァリエーションであるという事実である。

つまり、楽器を作る事も、油絵を描く事も、家具を作る事も、スピーカーを作る事も同じ手法の中で生み出され、その手法は、同じ文化的背景と美意識の中に収斂していくという事を感じさせるからである。

”コモンセンス”
もう少し具体的に捉えてみたい。
英国スタイルの伝統的な家具を作っているイギリスは、楽器の生産も盛んであった。そのイギリスで、オーディオ機器が盛んに作られた。彼らは、油絵を書くように、楽器を作るように、家具を作るように、スピーカーを作っていた、と想像させる。共通するのは、彼らが良いと判断した”コモンセンス”とも言うべき意識である。彼等の心や思いは、形に・仕上がりに、そして音に顕れている。 この頃に作られたスピーカーが如何に優雅で、家具的で感覚に即した”音楽的な”心地よさがあるか。そこに、二者択一を迫るような狭量さは無い。

付言するに、この時代は、第二次世界大戦後という時代背景が影響していた。フランスは疲弊し、ドイツ・イタリアは敗戦で余裕もなく、アメリカは誇るべき伝統を持っていなかった。奇しくもオーディオの興隆期と伝統が生きていたイギリスで具現したという事だろう。

スピーカーに求められる正確さ
こういった考えに対して、楽器は純粋に”美音”が求められるが、対してスピーカーは”正確さ”が求められる、という意見も在るだろう。こちらの考えを支持する人が多いかもしれない。

さて、その正確さはどのようにして計られるのか。
定位置に据えたマイクと信号発生器によりスイープした出力信号をプロットした周波数特性・差分を取り出した歪特性・指向性等など それまで一般的であったこの静特性の測定から、画期的な”スピーカーの動特性 時間軸での解析” 。 電子計算機とFFTアナライザーを使用して解析を始めたのは、イギリスのKEFが一番早かったように記憶している。今日のスピーカー解析はここから始まったといえるかもしれない。

累積スペクトル・群遅延特性など時間軸の変化量と周波数スペクトルを関連付けた解析はその後のスピーカーの在り方を方向付けた決定的な分水嶺になっていると思う。

確かに、解析・測定技術は発達したが、再現される音は”正確”になったのだろうか?音は良くなったのか?音楽家が重視する・音が良く通る・音が良く響くという状態は、どのように測定されるのか?

最新鋭機の測定結果は、忠実性 正確さを反映しているのだろうか?
正確さと言ったところで、現代の最先端のスピーカーであってさえも、その測定結果は惨憺たるモノである。 50ヘルツ~20000ヘルツまでが最新のスピーカーは± 3 dBには入っていると評価するコメントをしている人がいるが、静特性での特性は、何ら音楽的な要素を反映していない事は常識でもある。

肝心の動特性に至っては、何も良くなっていない。むしろ悪くなっている。因みに35年前のLo-D HS10000の周波数特性は驚くべきフラットさで、今日のどのスピーカーも達成できていない。
測定結果の評価は、曖昧なままでそこには達成点も問題点の指摘もない。何故だろう。

測定技術は、エンジン性能をブレーキで評価するような正確さを欠く物で、KEFの頃と何も変わっていない。本当に発達したのは、測定記録技術だけである。
 
エンクロージャを金属で作ろうが、異型のフォルムを採用しようが、実は何も良くなっていないのである。原理原則が変わらずにユニットも、内実は何も変わっていないのだから当然ではある。
最新のテクノロジーで位相差を無くしたクロスオーバーネットワーク等という記述も、その誤謬性を指摘しない。

伝統的な手法や、感性・美学に基いた設計・製作が、科学的でないということはないし”原音”から大きく乖離してしまうという事もない。 ある条件の下、再現性があるならば、それは数値化されていなくとも科学的な論理性と普遍性を備えている。

不十分な”正確さ”は総合的な”コモンセンス(便宜上イギリスを取り上げたので)”を越える事はないと思う。

”スピーカーは、楽器であり 変換機である”。


塗装の事から話が逸れてしまった。回を改めてもう少し掘り下げてみたい。
次回は内部の塗装について。



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